出来の良いコピーバンドみたいな映画。「フリクリ オルタナ」レビュー
OVA版フリクリは奇跡的なほどにレベルが高いものだったので、18年前のアニメとはいえあれを超えるのは無理だろうと思って心のハードルをあらかじめ下げた上で見に行ったつもりでした。
ただ、そのハードルを下げる方向が間違ってたんでしょうね。
出来が悪いわけではなく、表題の通りの感想を持ってしまいました。
OVA版「フリクリ」の魅力とは
では18年前に戻って、OVA版の話をしましょう。ぼくは当時、リアルタイムではなく後追いで見た記憶があるのですが、とにかくめちゃめちゃスタイリッシュでかっこよかったんです。
作画がいい
平松禎史さん、今石洋之さんといったメンツが作画監督、絵コンテでは吉成曜さんや鶴巻さん、摩砂雪さんなどが参加し、さらに原画では大平晋也さんや北久保弘之さんなど有名どころバッチリ(作画wikiにも記載があります)。アクションシーンのカットの割り方もきれいで、躍動感のある演出がされていました。
見たことのない演出
これ、明らかに漫画(しかも単行本)っぽく表現されてますが、これもアニメです(笑)。
ちなみに左の方に写っている眼鏡の男性は主人公の父親なのですが、元編集者らしく「昔エヴァの謎本出してたらしいよ」と言われていたり、上記のシーンに対して「撮影さんからも手間ばかりかかって大変だったって言われたり」とかメタな発言をしていたり、細かい設定にもサブカルっぽいセンスの良さを感じます。
パロディが渋い
作中でハル子が、「ダーイコーンブイ!」って言いながらバニーガールのコスプレをしている場面があるのですが、これはまだガイナックスが成立する前の頃、DAICONというイベントで女の子がバニーガールの格好をしていること、かつそのシーンで持っているギターがフライングVだという分かりづらいパロディですね。
↑音楽がめっちゃかっこいい!作画もすげえ良い。
他にも、ハル子がベスパに乗っているので「ハチ女?」とかクラスメートが話ししているのですが、ベスパ=ハチなので、これは恐らく仮面ライダーの怪人のハチ女とかけてるんですね。
音楽が良い
フリクリといえば、the pillows。むしろPVといってもいいくらい音楽とシンクロしてます。このへんとか。他にも一部のシーンの動画はちょこちょこあがってますが、ストーリーと組み合わせてこそのところもあるし、権利的にもちょっとアレなので、是非ソフト版買って見てくれーーーー!!一応日本のアマゾンでリンク貼ってるけど、北米とかで買うともっと安いぜ!
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「フリクリ オルタナ」の出来はどうだったか
では、今作「オルタナ」はどうだったか。決して悪いわけじゃないんですよ。少年が大人と交流して少し大人になるというOVA版と比較して、オルタナは少女たちが大人と触れ合ってお互いの友情を確認するって考えると筋道は通ってるし。
ただ問題として、演出効果がまんまOVA版踏襲してるんですよ。
見たことのない演出はどこにいったのかと。新しさはどこにあるのかと。
例えば上に挙げた動画のシーンである「男の頭にシャンプーハットをかぶせて、その中に女が手を突っ込んで探る」っていう演出とか、まんまなんですよ。(多分カット割りも同じで、セリフもかなり近い)
いや、何も一から十まで見たことのない演出で固めろって言ってるわけじゃないんです。OVA版でもパロディの演出なんていくらでもあるわけだし、全く参照元のない演出とかもはやないんじゃないかという気もしますし。
ただ、例えばめちゃめちゃ完成度の高いビートルズのコピーバンドがめちゃめちゃクオリティの高い曲をリリースして「これがビートルズの新曲です」って言われても、我々はビートルズの新曲だとは思えないわけじゃないですか。そういう心境が近いんじゃないかと思います。